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 サイト開通   2002年11月25日


言い訳もなく更新したり。(11月03日)

 

 


某月某日:鬼海弘雄『PERSONA』

 雑誌『アサヒカメラ』ですでに何枚か紹介されていたのをそれなりに興味深く眺めていたのだけど、それほど感動はしなかったものだ。ところが先日書店に行ったら写真集のコーナーにこの鬼海弘雄『PERSONA』が平積みにされていて、手にとって見てみたらすごく面白く、時間を忘れてしばし見入ってしまった。9500円と高価なので残念ながら手の出せるものではない。

名もない普通の人たちのはずなのに、どのひとも普通ではない。時間の堆積のなかで、奇妙に磨かれてきた個性が光る。ある写真は15年という歳月がいかにひとりの男から暴力的に若さを奪い取るのかを示してくれる。

 別にこのひとの写真集にかこつけて言うべきことでもないが、ポートレートを撮るのはひどく難しい。なにが難しいって、そもそも撮ることをお願いするのが恥ずかしいというか緊張するのだ。道行く人を許可なく勝手に撮るというのもテだが、ばれたら殴られる可能性だってある。それで人物写真といえばごく親しい人間とか、そうでなければ老人や子供ばかりになってしまう。カメラヲタは金を払ってプロのモデルを雇う。鬼海氏の写真は対象にかなり近寄って撮られている。時には斜めを見ていたりするが、基本的にこちらを見ている。写真を撮るのは被写体の方もカメラマンの方も緊張する。写真撮影とは一種のコミュニケーションだ。サルトルふうに言えば(読んだことないけど)視線の「地獄」であり、撮影者はファインダーを通すことにより被写体に対する一方的な視線を貫こうとする。被写体も「撮られる」という受動的な立場に甘んじることはなく絶えず撮影者を挑発しつづける。

 ・・・それをこういう風にきっちりと対象の実存をえぐり取りつつ、しかも軽さを残して撮る、というのは大変すごいと思った。良いなあ。おれもこういうポートレートを撮りたいもんだ。あ、あとこの写真集の魅力のひとつとして、写真のそれぞれにつけられたキャプション、題名と解説を兼ねる短文にひどく味があって面白い。廉価版が出たら即買おう。出なかったら買わない。買えない。

関連:
http://www.soshisha.com/books/1240.htm

 


 

6月某日:『バルニーのちょっとした心配事』 / 『キス★キス★バンバン』

 近所に「西灘シネマ」という古い、というか古臭い映画館があって、古臭いクセに意外と良い感じのチョイスの作品を上映していたりするし、二本観て千円チョイというのはやはり魅力的、ってことでたまに観に行くのですが、まあ大概はハズレ作品ばかりだったりして、そういうわけで今回はこの二本。

 今回は以前にも見たことのある『キス★キス★バンバン』を改めて観たかったので、『バルニー〜』は自分の中では前座扱いだったのですが、じっさい観てみたら前座以下でしたね。ああクダラナイ、と心のなかで何度も呟きつつもついつい最後まで観てしまうのは、我ながらお人よしというかおバカというか。尤も、ダメな映画を観るという行為は決してムダではなく、本当に良い映画の良さをわかるためには勉強として必須課題だとさへ思ふのですが。

 一応ストーリー紹介などしますと、バルニー氏は、イギリス在住のフランス人ビジネスマン。彼には若い女性の愛人と男性の愛人の両方がおり、しかも自分自身は一人娘と妻を持っている、という、見てくれのダサさのわりにモテモテの人生を送っている。そんな彼に、女性の愛人と男性の愛人と妻のそれぞれが(偶然)「オリエント急行」のペアチケット(しかもみな同じ車両)を誕生日プレゼントとして送るわけです。で、当然のごとくバルニー氏の不倫やら二股やらがバレたりバレなかったり、愛人たちは別の恋人とくっ付いたり、妻も実は不倫していたり、実はその不倫相手が一人娘の学校の先生で一人娘は彼に恋していたり、とあらゆるワイドショー的ネタを振りまぶしてグタヽと展開していくわけです、ああクダラナイ。

 で一応最後は夫婦が元通りくっ付くんですが、その終わらせ方が酷くって、バルニー氏の女性愛人氏が、列車から飛び降りた(?)ペットを探しに出ていき、他の登場人物たちがそれを手伝いに降車した際、ここぞとばかりバルニー氏が車掌に頼み込んで彼らを置き去りにしたまま発車してしまう、というものですが、これはいくらなんでもどうかと。周囲には見渡す限り草原という状況に取り残されて、バルニー氏の愛人たちやその新しい恋人達計4人がなんとなく脱力した感じで走り去っていく列車を見送るのは、彼らもまたこの作品のクダラナさを内心自覚しているようで、見ているほうもなんとなく気まずくなったり。

 さきほどもチラと触れましたが、バルニー氏がとりあえずカッコ悪くて、なんでこんな人に愛人ができるのかと不思議に思ったりもするのですが、それを取り巻く登場人物、女性愛人や男性愛人、そしてとりわけ一人娘がなかなか可愛らしく、もっと登場させてくれればよかったのにとか思ったり思わなかったり。

 こんな映画でも本国おフランスでは83万人も動員したとか、フランス人も結構おバカであるなあ、と、まあさういうお話。

 関連:
 
http://www.alcine-terran.com/data/chottoshita/chottoshita.html


 んで続いて『キス★キス★バンバン』。去年シネ・リーブル神戸で観て、そのときはかなり気持ちの良い印象を抱いたのですが、改めて観直してみるとなんだか偽善的というか生ぬるいところが色々と鼻についたりしてあまり楽しめなかったり。もっとも学割を使っても1500円も取られる正規の映画館で見れば、厭が応でも「アレは面白かったのでアル!」と無意識に自分を思い込ませたりするかもしれないですが。

 腕に衰えを感じはじめた殺し屋が、足を洗って新しい仕事を始めるのだが、その仕事というのが三十歳になるまで温室で甘やかされて子どものまま育ってしまった「ババ・ボーイ」の世話係であった!サテヽだうなることやら、というお話。まあ公式サイトなどを見て下さいヨ。

 先に生ぬるいとか書きましたが、さうは云ってもやはり観て損はない作品でして、例えば冒頭の1シーン、殺し屋フィリップスが獲物を探してプールサイドをうろつくところで、飛び込み台から次々と人々が波を描くように飛び込んでいくショットなどは「おおっ」と思わせずにおられません。まあ、明らかにムダなスローモーションを使ったりしているのですが、面白いからいいやってことで。

 この映画、キャストがなかなか良いですネ。尤も映画俳優はおろかテレビタレントの顔すら殆ど認識しない僕のことですから、有名人が含まれているのかどうか良くわからないのですが。主人公フィリップスは素晴らしく渋い男らしい声の持ち主で、中年になったらあんなオヤジになりたいものだ、とか思ったり、フィリップスの恋人役の女性がこれまたなかなか小粋なネエさんで、ストレートに「美人ダ!」とは云えないのですが、ちょっと鼻が上を向いているのが実はかなりチャーミングで、あんな感じの笑顔を見せる女性が近くにいれば生活はどんなにか潤うのではないかとか思ったり(公式サイトに載ってる写真はドレもコレも激しくイマイチですネ)。ババの父親役もこれまたなかなか良い味をだしており、マア映画の中ではダメ役として描かれておるのですが、これぞ名脇役って感じですネ。殺し屋組織の人々もみなそれぞれヒトクセありな人ばかりで観ていて飽きないです。

 準主人公のババなんですが、俳優さんはかなりいい演技をしていて、演技のことなどまるでわからない僕でも上手いなあ、とか思いながら観てしまうのですが、何も知らずに育ったとはいえ30歳の男があんなに清潔なハズがありません、実際初対面の女性にいきなりキスしたり恋人とヤッちゃったりと、一応オトコとしての側面も描いているのですが、30代男子はもっと汚らしいだろうと思ったり思わなかったり。

 この映画で一番印象に残ったところ。死に逝こうとするフィリップスの父親が、キリンの折り紙をフィリップスに渡す。フィリップスは、ババにあげるものだろうと思って「ババに渡しておくよ」というのですが、「フィリップス、それはお前のだよ」、と。それに続くシーンで、青い壁紙をバックに折り紙のキリンがトコトコ、とやってきてウィスキーをクイと一杯…。という一連のシークエンスが堪らなく好きです。リズムもバッチリ、たいへん面白いと思いました。その続きは見てのお楽しみ。

 さてネタバレになるのであまりおおっぴらに云へないのですが、ラストシーンについて。あの殺し屋クラブは闘争によってボイラーが破裂しそうになってましたよネ。で、あのフィリップスと弟子の告白のあと、ボイラーが大爆発→全員死亡。その後の数シーンはなんというのでせう、死ぬ間際に見る夢、として僕は解釈したのですが。それなので「ここは海。やっとたどり着けた」というフィリップスの朗読に一人ブワっと泣けてしまったのです。まあずっとそのようであると信じていたのですが、ラストシーンはアレですか、とくに波乱もなく皆助かって、子どもも無事生まれて、ハッピーエンドってことだったんでせうか。

 と気がついてみると評論めいたことなど一切せずひたすらに感想を述べているだけですネ。アレま。まあ一言で云ってしまえば「父親と息子の対話」ってことがサブ・テーマになっているのでせうか。ババも弟子もフィリップスの息子、勿論恋人に受胎した新しい生命もまたフィリップスの息子。フィリップスもまた父親の息子、オトコはこれ皆息子なりと。なんのことだか良くわかりませんが、ここらで放擲。

 とりあえず観終わって人生がふわっと軽くなる良質の映画、観て損はないですヨ、と。
 あ、そうそう、主題歌も非常に気に入りました。

 「フライパンのなかにもうソーセージはない、けれども最後は「キス、キス、バン・バン!」」

公式サイト:
http://www.gaga.ne.jp/kisskiss/



 

 

6月15日:ニルヴァーナ「you know you're right」 / 薬局が危ない
 

 人に頂いた、ニルヴァーナの「you know you're right」のビデオクリップに震撼する。すげえ。カッコよすぎる。この曲は長らく公開されていなかったもので、カート・コバーンが自殺して十年ちかく経ってようやく、ベストアルバムの一曲目として日の目を浴びた。なんで公開されるのにこれだけ長い時間を要したのだろうか。理由は良くわからない。ニルヴァーナにかんしては僕はアルバム「NEVER MIND」ぐらいしか聴いたことがないんだけど、この曲はまちがいなく彼らのベストソングのひとつになるだろう。これがもっと早くに広く聴かれていたなら今のアメリカのロックシーンはもっと別のものになっていたはずだ。なぜこれほどの名曲が長い間封印されていたのか。おそらくミュージックビジネス上のくだらない駆け引きがあったのだろうが、まったくもってバカげた話である。

 大体ニルヴァーナの曲ってぱっとしないのが多く、それでいままでピンと来なかった。先にも触れた「NEVER MIND」だって、好きだと思えるのは「SMELLS LIKE TEEN SPIRITS」や「BLEED」くらいなもので(とはいえこの二曲はたしかに名曲だ)、あとはどうとも思っておらず、なぜそこまで伝説的バンドとしてもてはやされるのか正直わからんかった。

 で「you know you're right」のビデオクリップを見てその考えが少しは変ったように思う。この曲はカートの死の直前に録音されたものだから当然オフィシャルなビデオクリップは残っておらず、既存の映像を切り貼りしてそれらしく編集してあるものなのだけど、それら無数の断片から、いかにニルヴァーナというバンドが時代と一致し、また世界に必要であったかが現われてくる。カート・コバーンは当時の若者の苦しみや怒り、悲しみを一挙に引き受けて飛びたつ、巨大な翼のような人物だったのだ。

 にしてもこの曲、おどろくほどシンプルなんだよな。リフらしいものといえばひとつしかなく、コードも三つしか使われていない。コード進行も単純だ。にもかかわらず、重苦しくうねるベースとデイブ・グロールのヘヴィなドラムで始まり、そこにカート・コバーンの歌が乗るとまったく別の世界に入り込んでしまう。なんであんなに暗くしかも不健康に演奏できるんだろう??

 ま、ビデオクリップは入手するのがいささか厄介であろうから、とりあえず曲ぐらいは聴いておいてべきでしょう。20世紀の記憶されてしかるべき一曲。

 と思ってたらここで試聴覚できるらしい。なんでい。↓
http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/nirvana/nirvana_disco/uicy1140.html


*****

 
ンビニでも胃腸薬や湿布といった類の薬品が販売される可能性があるようだ。ま、便利になるのは一向に構わないというかありがたいんだが、そうなるとほそぼそと経営している町の薬局が一気に圧迫されるだろうな。つうか現時点ですでに死にかけているような薬局があちこちで見かけられる。大型店と違って大幅な値下げが出来ないから現時点でもすでにつぶれそうなのだ。これ以後コンビニに統合されてしまう店舗が少なくないだろう。寂しい限りだ。サトちゃん人形が見られなくなってしまう。
 つうわけで、今のうちに薬局に行っておくといい。かも。

毎日新聞記事
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20030615k0000m010080001c.html

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ッシュ大統領のあられもない姿。ぷぷっ。
http---story.news.yahoo.com-news-tmpl=story2&u=-030612-170-4dnhg.html&e=1&ncid=996


6月14日:無題

 何をいまさらのこのこ出てきた、と思われるかもしれないが、アクセス解析とやらを調べてみるとこんなサイトでも日に3人くらいは訪れてしまってくれる人がいるらしきをみてさすがに心を痛めたのである。んなわけで、一応生きていることだけは述べておかなくては。はい。だいたい、二週間アップローダーとやらにアクセスしないと消しますとか脅されてたんだが、ちっともその気配がない。まあいいや。んなわけで型の力を限りなく抜きつつこっそり再開(?)。じぇんじぇんやる気ねえっす。